樹のココロ 人の心 小島棟梁のひとりごと 001
樹のココロ 人の心 小島棟梁のひとりごと 001 |
今年は縛れる寒さを知らない内に三月を迎えてしまった。我が家の大木桜も気が早く、ポッポッとほころび初める。このままだと今月中に満開になりそうだ。
抜ける様な青空の下、小学生が色とりどりの服装で、通学路を声高らかに通る。楠公園の桜も開花し始め、その周りの住宅地に狭まれた家庭菜園には、ホウレン草の緑と、取り残された大根が、大地から突き出される様に、人待顔立っている。
・・・『地球は青かった』・・・(1961年)旧ソ連の宇宙飛行士ガガーリンが、宇宙から始めて述べたメッセージです。
地球が青いとは誰も知らなかった。その感動は、宇宙からの送電写真を見たすべての人々に与えた事でしょう。地球の青さは、海の色からでしょうが、そればかりでは無いと思う。地球上の大地の半分は、緑に覆われた草原や森林地帯です。
大気に覆われた水の惑星地球には、海に浮かぶ大地と、大気中に流れる雲と、雲間から望める宇宙からの恩恵、太陽光線の織り成す栄養に富んだ気候がある。
日本には、気候風土にあった家造りが昔から続いています。その建築工法は在来工法と呼ばれています。工法には在来の他に、パネル工法、2×4工法と大別されていますが、在来工法の良さは、木のぬくもりを感じる工法だと言われる。
杉や檜、欅(けやき)や楢(なら)、松にヒバ材と、用材には色々在りますが、その木の持つ特性を生かし、木肌の美しさを引き出して作る工法が、大工さんの腕の見せ所で、在来工法の本質でしょう。今では、総ヒノキ造りと呼ばれる家は数が減ったけど、檜の肌の感触と、色艶の美しさは、例え様の無い光沢と重みを与えてくれる。
一本一本の柱に当てるカンナの切れ味が、檜の本質に迫り、木の良さを引き出し、木の心に適う、使い方が出来た時の嬉しさは、大工冥利に尽きる。
木の良し悪しは一概には判断できません。遍木も直木も使い方に依って生きてくる。木にも老木と若木があります。人間ならば若い方を使いたく成りますが、木は反対で老木を使う。木は老木になるほど木目に光沢が出、しなやかな美しい色艶を醸し出す。私もそろそろ還暦です。老木翁いたりと言えども、まだまだと思っている。
タウンニュース 平成14年2月号より